抄録
これまで我々は、イネ(ササニシキ)葉から分画した核画分と葉緑体画分を用いて、各画分におけるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)光回復酵素活性の有無を調べた。その結果、光回復酵素活性は核では認められたが、葉緑体では認められなかった(2003年度年会)。本研究では、生葉を用い、上記のことを確認し、さらにミトコンドリアにおけるCPD光回復の有無について調べた。UV-B照射によって、各オルガネラDNAにコードされている遺伝子に生じるDNA損傷の生成とその光修復及び暗修復をReal-time quantitative PCR法により定量解析した。核ゲノムにコードしているrbcS, cab, phr (CPD photolyase)、ミトコンドリアゲノムにコードしているcox3, cob, orf288 (open reading frame 288)、葉緑体ゲノムにコードしているatpB (ATPase beta subunit), rbcLを解析の対象とした。UV-B照射によりこれら全ての遺伝子には損傷が生じた。光修復は、核においては認められたが、葉緑体では認められなかった。一方、ミトコンドリアでは、核と同様光修復能が認められた。また、各オルガネラにおける暗修復は、光修復に比べ低いか又は無いため、検出は困難だった。