抄録
イネのUVB感受性は品種間で大きく異なる。UVB照射量の多い地域で栽培されているイネが必ずしも強い抵抗性を示すのではなく、日本型水稲の中にも強い抵抗性を示す品種が多数存在する。日本型イネのうち、ササニシキは抵抗性を示すが、近縁な農林1号は感受性である。また、サージャンキ(indica)は農林1号よりもさらに感受性である。UVB誘導シクロブタン型ピリミジン2量体(CPD)の光回復酵素活性は、ササニシキで最も高く、次いで農林1号、サージャンキでは最も低かった。イネCPD光回復酵素は506残基のアミノ酸からなる。アミノ酸配列には品種間で変異が見られ、ササニシキの126番目のアミノ酸はGlnであるが、農林1号、サージャンキではArgである。また、296番目のアミノ酸はササニシキ、農林1号がGlnであるのに対して、サージャンキではHisである。これらの結果、イネのUVB感受性の差異は、CPD光回復酵素の構造の変化による酵素活性の強さの違いによってもたらされる可能性が考えられた。このような違いは、野生イネでも見られるのであろうか?本研究では、アジアのOryza rufipogon、オーストラリアのO. meridionalis、アフリカのO. barthiiの各種野生イネのUVB感受性、CPD光回復酵素活性とそのアミノ酸配列の株間における違いを検討した。