抄録
1-aminocyclopropane-1-carboxylate oxidase(ACO)は、植物ホルモンであるエチレンの生合成酵素である。イネのフィトクロム(phy)突然変異体を解析している過程で、ACO遺伝子の発現についていくつかの知見が得られたので報告する。
イネには3種類のフィトクロム分子種が存在する(phyA, phyB, phyC)。フィトクロム突然変異体を用いたmicroarray解析で、phyAおよびphyBを同時欠損した2重変異体(phyAB)およびすべてのphyを欠損した3重変異体(phyABC)において、ACOのアイソザイムのひとつ(AK058296)が、野生型と比較して、3-10倍程度、発現量が高かった。他のアイソザイムおよびACC synthaseには差が見られなかった。ただし、期待に反して、phyAB、phyABCでのエチレンの放出量には差が見られなかった。また、野生型では、遠赤色光パルスの照射によって、ACOの発現量が時間を追って減少したが、phyA突然変異体では変化がなかった。現在、フィトクロムによるACO遺伝子の発現制御機構の解析を進めている。