抄録
シロイヌナズナの光形態形成抑制因子COP1は、暗所では核に分布し、核内の転写因子等のタンパク質との相互作用を介して光形態形成を抑制する。一方、明所では細胞質に移行し、COP1による抑制が外れると考えられている。本研究では、COP1の機能発現の分子機構を明らかにするために、GFP-COP1を用いてCOP1機能と細胞内分布特性について検討を行った。また、対照としてCOP1 タンパク質のNLS (nuclear localization signal)に変異を導入したGFP-COP1(NLS mut)の影響も調べた。GFP-COP1、およびGFP-COP1(NLS mut) をシロイヌナズナ野生株(Col.)に形質転換した。それぞれの形質転換体の暗所芽生えの表現型(胚軸と子葉)を観察したところ、GFP-COP1、GFP-COP1(NLS mut)とも胚軸長に及ぼす影響が見られなかった。しかし、両形質転換体は、暗所で子葉を展開していた。これは、GFP-COP1が、子葉の展開に関して内生COP1の機能を阻害し、Dominant negativeに働いたためと推測した。そこで、形質転換体とcop1-4変異株を交配し、そのF2世代で暗形態形成を調べた。暗所芽生えの胚軸長には、GFP-COP1、GFP-COP1(NLS mut)ともに、影響が見られなかった。次に子葉の展開を指標に考察したところ、GFP-COP1はcop1-4を相補するが、GFP-COP1(NLS mut)はcop1-4を相補しないものと推測した。これの妥当性を証明するため現在実験中である。これらのデータを加えて、COP1の機能と核局在の相関について考察する。