抄録
パラコート耐性突然変異体 radical-induced cell death1 (rcd1; Overmyer et al., 2000) は At1g32230 遺伝子上に変異があり、rcd1-1 遺伝子を過剰発現させた形質転換体は程度は弱いが、rcd1 と同様にパラコート耐性を示す (Ahlfors et al., 2004)。このことは rcd1 が機能獲得型変異であることを示唆しているので、我々は rcd1 変異が機能欠損によるものか、それとも機能獲得によるものか調べるために、野生型 RCD1 の過剰発現体を作り、rcd1 と掛け合わせることによって rcd1 の欠損を相補するかどうか調べた。rcd1-2 変異体 (Fujibe et al., 2004) は一塩基置換による停止コドン化が起こっていて、短いタンパク質が生産されていると考えられる。この rcd1-2 へ RCD1 過剰発現コンストラクトを導入した個体はパラコート耐性が rcd1-2 よりも弱くなり、形態異常も軽減されたので、RCD1 の過剰発現により rcd1-2 変異は相補されたと考えられる。一方、RCD1 過剰発現体は rcd1 より弱いが rcd1-1 過剰発現体と同じ程度にパラコート耐性や rcd1 と似た形態を示すこともわかった。これらのことから、rcd1 は機能欠損の突然変異ではあるが、RCD1 の発現量は厳密に制御されていて、至適発現量を外れると異常を示すのではないかと考えられる。