抄録
植物は様々な環境ストレスに晒されている。これらの多くは、植物内において発生する活性酸素を介した酸化的ストレスとして認識されるため、ある程度共通した生理反応が誘導される。そのため植物の環境ストレス応答の解明には酸化的ストレスにより引き起こされる初期応答反応を調べることが必要である。現在までに、シロイヌナズナ野生型Colに酸化ストレスとしてオゾンを暴露すると1時間以内にGST3遺伝子が発現誘導されることがわかった。GST3の発現はサリチル酸やエチレンによる制御を受けていると報告されているが、この経路による発現誘導には数時間以上かかるため、このような短時間でのGST3の発現メカニズムを説明することは出来ない。そこで私たちは既に動物で明らかにされているGST遺伝子の発現制御メカニズムをモデルとして研究を進めている。動物におけるGSTの発現にはKeap1,Nrf2タンパク質とantioxidant responsible element(ARE)というシス配列が関与している。ColのGST3遺伝子プロモーター内にARE配列が見つかったため、GST3::GUSキメラ遺伝子を用いてAREの関与を調べた。また同時にKeap1遺伝子の破壊系統の解析も行った。また、動物ではCa2+シグナルやリン酸化の関与が報告されているためリン酸化阻害剤やリン酸化酵素破壊系統を用いてGST3の発現を解析した。