抄録
植物の形作りにおいて分枝は非常に重要な要因であり、分枝は腋芽分裂組織の形成および腋芽の伸長(休眠)の2段階の制御を受ける。われわれは腋芽の伸長(休眠)を制御する分子機構に関する知見を得るために、「分わい」と呼ばれる5つの腋芽休眠変異体、d3、d10、d14、d17、d27を解析している。これらの変異体では、腋芽の形成は正常であるが腋芽の休眠が弱くなっているために、分げつ数が増加し、さらにわい性になるという非常によく似た表現型を示す。しかしながら、変異体でも休眠の成長段階および裁植密度への反応性は残っていることから、分わい遺伝子はこれらとは独立の経路で働いていると考えられる。分わい遺伝子のうちD3をポジショナルクローニングにより単離した。D3はタンパク質分解に関わるFボックスを持つタンパク質をコードしており、シロイヌナズナの腋芽休眠制御遺伝子MAX2のオーソログであることが分かった。このことから、シロイヌナズナとイネで腋芽休眠機構が保存されていることがうかがわれる。また、分わい遺伝子はイネの腋芽伸長(休眠)の制御機構を解析するために有効であると考えられる。