日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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タバコ種間雑種細胞の致死発現過程における液胞崩壊の役割
*上田 純子三坂 裕子井上 雅好三野 真布
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p. 703

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抄録

雑種致死は生殖的隔離機構の一つであり、種分化に重要な役割を果たすが、植物の遠縁交雑育種の大きな障害である。我々はタバコ種間F1雑種(Nicotiana gossei x N. tabacum)の培養細胞(GTH4)を用い、雑種致死が液胞の急速な崩壊により引き起こされる細胞死であることを明らかにした。GTH4細胞は37℃から26℃へ移すと細胞死が進行する。蛍光顕微鏡の経時観察から、26℃移行後に原型質糸の消失とFDA染色の退色が起こる事、更に細胞内pHの低下、ミトコンドリアの膜機能の喪失、葉緑体の自家蛍光の消失、アクチン繊維の不可逆的な消失が起こる事が確認され、これらの変化が液胞崩壊によるものである事が示唆された。細胞の連続観察による細胞内部構造の経時的変化の調査から、細胞を26℃に移して6~12時間で液胞崩壊が最も速やかに進む事を確認した。次に、液胞崩壊に関与すると考えられているVPE(vacuolar processing enzyme)/legumainの活性を測定したところ、26℃の細胞では液胞崩壊が起こる6時間でその活性が高まる事が確認できた。しかしVPE1VPE2VPE3の発現量は26℃ 6時間では低下していた。雑種の細胞死でのVPE/legumainの役割についても考察する。

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© 2005 日本植物生理学会
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