抄録
AP2/EREBPファミリーは植物転写因子の最大規模のグループであり、その機能は形態形成からストレス応答まで多岐にわたる。これまでに植物細胞においてAtEBPが転写因子として機能し、その転写制御の解析をおこなってきた。
AtEBPは動物の細胞死誘導因子であるBaxが引きおこす細胞死を植物体レベルで抑制することを見出した。AtEBP過剰発現がBaxにより生じる活性酸素種(ROS)の生成を抑制するかどうか明らかにするために、NBT染色およびDAB染色をおこなった。その結果、AtEBP遺伝子の発現の有無に関わらず、DEX処理後7時間目にO2-およびH2O2の蓄積が細胞内小器官で確認され、AtEBP遺伝子の発現はBaxによるROS生成過程に影響を与えないことが明らかになった。また本遺伝子のシロイヌナズナ過剰発現系統およびノックアウト系統を用いてH2O2およびメチルビオロゲンを処理した際の耐性およびGST・GR活性を調べたが、コントロール植物と差異はみられていない。一方で植物のディフェンシンであるPDF1.2の遺伝子発現がAtEBP遺伝子の発現に依存的に制御されることをみいだした。AtEBPが病原体に対する耐病性に関与しているのかもしれない。