日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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活性酸素誘導型細胞死におけるミトコンドリアの動態の解析
*吉永 恵子川合 真紀有村 慎一藤本 優堤 伸浩内宮 博文
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p. 705

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抄録

活性酸素種の蓄積は細胞死を誘導する。本研究では活性酸素誘導型細胞死における実行機構を明らかにするため、ミトコンドリア移行シグナルを有するGFP形質転換シロイヌナズナ(mt-GFP)を用いて、細胞死過程におけるミトコンドリアの動態の解析を行った。過酸化水素、パラコート、メナジオン、サリチル酸を活性酸素ストレス誘導薬剤として処理した。その結果、過酸化水素、パラコート、メナジオンにより処理した細胞では、ミトコンドリアの形態変化が起こり、原形質流動が停止した。一方、サリチル酸を処理した細胞では、急速な葉の白色化が起こったものの、ミトコンドリアの動態に顕著な変化は起こらなかった。また、活性酸素ストレスによりミトコンドリアのサイズが半減していた。このことからミトコンドリアの分裂が細胞死の促進に関わるか調べるため、mt-GFPを有するDRP3Bドミナントネガティブ植物に対して過酸化水素処理を行った。DRP3Bdynami-related protein 3B)はシロイヌナズナにおいて、ミトコンドリア分裂過程に関わる遺伝子として同定された。DRP3Bドミナントネガティブ植物では外膜の分裂阻害により、融合のみが行われミトコンドリアの伸長化が引き起こされる。この植物体を過酸化水素処理すると、小さく球状になったミトコンドリアが数珠状につながる形態変化を示した。このことから、活性酸素ストレス条件下でもミトコンドリアの分裂が起きている可能性が考えられる。

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© 2005 日本植物生理学会
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