抄録
レタス芽生えは酸性条件下(pH4)で培養すると根毛形成を行う。この現象に関して地上部を切除した芽生え(単離根)では根毛が全く形成されなかった。地上部を純水でホモジナイズし、単離根の酸性培地に加えると根毛を形成した。これらの結果は地上部に根毛形成に必須な物質が存在することを示唆する。単離根の酸性培地に根毛形成誘導効果を示すIAA・ACC・サイトカイニン・JA・アブシジン酸をそれぞれ加えると、IAA・ACCで若干の、サイトカイニンで著しい根毛形成の回復が見られた。しかし、地上部抽出物中の活性物質のC18 Sep-Pakカラムでの挙動はサイトカイニンとは明らかに異なった。そこで地上部をアセトンで抽出し、溶媒分画した後、陰イオン交換クロマトグラフィーと逆相HPLCによって分画し、LC-MS・NMR等で分析した結果、単離根における根毛形成誘導の主要な因子として、3-O-カフェオイルキナ酸(クロロゲン酸、CGA)が同定された。市販のCGAを単離根の酸性培地や無傷芽生えの中性培地(pH6)に添加しても根毛が形成された。このときの最適濃度は共に10-5Mであった。単離根におけるCGA含量は、無傷芽生えの根における含量の4分の1であった。無傷芽生えにおいて中性培地と酸性培地でCGA含量には大きな差は見られなかった。以上の結果は、地上部から根に供給されるCGAが根毛形成に必須な役割を果たしている可能性を示唆している。