抄録
小胞体は分泌経路の最初のオルガネラであり,分泌タンパク質や中央空胞系のオルガネラタンパク質などの合成の場となっている.小胞体には,正常な高次構造をとったタンパク質のみをゴルジ体以降へ輸送し,高次構造形成に失敗した異常タンパク質を留め,修復または分解する「タンパク質の品質管理機構」が存在する.小胞体品質管理機構には小胞体の分子シャペロンが関与しており,なかでも小胞体のHsp70であるBiPは中心的な役割をはたしていると考えられている.シロイヌナズナにはAtBIP1,AtBIP2,AtBIP3という3つのBiP遺伝子が存在する.出芽酵母を用いた解析によって,優性欠損や温度感受性などの表現型を示す様々なBiPの変異体が作製されている.これらの変異は,種を越えて保存されているアミノ酸残基の変異であり,AtBIP1遺伝子にこれらの変異を導入することによって,同様の欠損を引き起こすことができることが期待される.そこでわれわれは,シロイヌナズナ培養細胞を用いて,優性欠損変異を導入したAtBIP1遺伝子を発現する解析系を構築した.現在までに,AtBIP1変異体の発現によるタンパク質凝集の誘起を示唆する結果を得ている.また,現在,これらAtBIP1変異体を花粉特異的なプロモーターを用いて植物体内で発現する系も構築するとともに,BiPの制御因子として機能すると予想される小胞体DnaJホモログの同定とその変異体の構築も行っている.