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非ストレス条件下で生育させた耐塩性光合成成育突然変異系統pst2 (photoautotrohic salt tolerance 2) および野生系統に対し,cDNAマクロアレイおよびオリゴマイクロアレイを行い,pst2において発現が特異的に高い遺伝子を特定した.この1つであるAt2g22760 (bHLH19遺伝子) からは,塩ストレスにより新たな転写産物が生じることが明らかになった.この塩基配列を決定した結果,これは選択的スプライシングによるものであることが判明した.また,RACEにより,この遺伝子の転写開始点は1箇所と予想された.塩ストレスにより誘導されるmRNAは,2つ存在するイントロンのうちのN末端側が正常に削除されずに残っており,残った領域に存在する停止コドンとそれに引き続く開始コドンにより,非ストレス条件下に合成されるタンパク質分子種が二分された形のタンパク質が発現することが予測された.そこで,それぞれのタンパク質分子種を強制発現するシロイヌナズナ形質転換系統を作製し,発現量と耐塩性を比較した. さらに,それらのタンパク質分子種とGFPとの融合タンパク質を一過性発現させ,その局在を明らかにした.以上を踏まえ,bHLH19転写因子の機能および耐塩機構への関与を報告する.