抄録
真核生物DNAのシトシンは、わずかながら複製後にメチル化を受け5-メチルシトシン(m5C)に転ずる。遺伝子および転移因子の発現抑制に関与するとされる。高等植物では、染色体上のm5Cの位置は、体細胞分裂では維持される。しかし、減数分裂後のゲノム全体でのメチル化の動向には不明な点が多い。
本研究室では、イネ(ヤマダニシキ)の種子を脱メチル化剤5-azadeoxycitidine (5-azadC)で処理し、矮化などの形質変化を誘導した。これらの形質は世代を超えて維持された。本研究では、この矮性イネを用いて、脱メチル化の遺伝様式を解析した。ゲノム全体のm5Cの割合をHPLCで測定した結果、矮性イネでは世代を超えて低く維持されていた。既知の配列を用いてメチル化の変化した領域をサザン解析で探索したところ、配列に依存した脱メチル化レベルの差が見られた。特定の転移因子やrDNAの配列でメチル化の低下も確認された。さらに、野生株と矮性株でメチル化の変化している配列をMSAP(Methylation-Sensitive Amplification Polymorphism)法によって探索し、有意にメチル化の低下している遺伝子を検出した。これらの機能と染色体上の位置を特定することで、世代を超えたメチル化の法則性が見つかるものと期待される。形質変化とメチル化の関連についても検討する。