日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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フィトクロム発色団の化学合成と再構成フィトクロムの機能
*猪股 勝彦
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p. S09

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抄録
フィトクロムは発色団として開環状テトラピロール1分子を有し,A環でシステインとチオエーテル結合している。我々はこれまで,天然型発色団であるフィトクロモビリン(PΦB),フィコシアノビリン(PCB),ビリベルジン(BV)及び,それらの種々の誘導体を化学合成し,アポ蛋白質との再構成における結合能や光可逆性,共有結合の有無について検討した。その結果,テトラピロールのA~D環はアポ蛋白質との相互作用においてそれぞれ異なる役割を果たしていることを明らかにした。また,シロイヌナズナの発色団欠損変異株を用いたin vivo実験から,D環18位のビニル基はphyAの機能発現にとって重要であることを見出した。一方,バクテリオフィトクロムAgp1の発色団はBVであることが知られていたが,発色団のどの部分と結合しているかは不明であった。そこで,化学合成した種々のBV誘導体を用いて再構成実験を行ったところ,Agp1はA環のビニル基と共有結合していることが分かった。さらにC環とD環の間の立体化学を固定したBV誘導体を合成し,アポAgp1と再構成して得られるホロ蛋白質について詳細に検討した結果,Pr及び Pfrにおける発色団のCD環部分の立体化学は,それぞれZ-anti, E-antiであることを明らかにした。今後,Pr, Pfrで固定されたフィトクロムの研究が可能になると思われる。このように,フィトクロム研究における有機合成化学的アプローチは,極めて有効であることが明らかとなった。
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© 2005 日本植物生理学会
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