日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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フィトクロムの細胞内シグナル伝達機構再考
*松下 智直岡 義人長谷 あきら
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p. S11

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抄録
 フィトクロムは植物の主要な光情報受容体であり、種子発芽から花成に至るまで植物の様々な光応答を制御している。フィトクロム分子は単量体分子量約12万の色素蛋白質で、光受容に働くN末端領域と二量体化に働くC末端領域の二つのドメインから成る。C末端領域にはキナーゼドメインやPASドメインなどのシグナル伝達に関与すると思われるモチーフが複数存在するために、これまで長い間、C末端領域が下流の因子にシグナルを伝達していると信じられてきた。このような背景の中、最近我々の研究により、フィトクロムの最も主要な分子種であるフィトクロムB(phyB)が核内においてN末端領域からシグナルを伝達することが明らかになり、フィトクロム分子に対するこれまでの考え方を改める必要が生じた。フィトクロム分子のN末端領域にはシグナル伝達や遺伝子発現制御に関与するような既知のモチーフは存在せず、そのシグナル伝達機構は全く不明である。そこで我々は、1) phyB分子のN末端領域内でシグナル伝達に直接関与するアミノ酸残基はどれか? 2) phyBのN末端領域から発せられたシグナルを伝達する下流の因子は何か? という二つの問いを立て、主に遺伝学的手法を用いてそれらに対する答えを求めるべく解析を進めている。そうすることで、phyB分子による光シグナル伝達の実体を解明する手がかりが得られるのではないかと期待される。
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© 2005 日本植物生理学会
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