日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネ・フィトクロム三重突然変異体の解析によって見えてきたフィトクロムの多面的な機能
*高野 誠謝 先芝稲垣 言要篠村 知子
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p. S12

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抄録
イネには3種類のフィトクロム分子種(phyA, phyB, phyC)が存在する。私たちは、イネにおけるフィトクロムの機能を明らかにする目的で、すべてのフィトクロム突然変異体を単離し、さらにそれらを交配して2重、3重突然変異体を作製した。それらの形質を比較・解析することにより、それぞれのフィトクロム独自の機能や相互作用に関する様々な知見が得られた。まず、phyA単独の突然変異体は、明確な表現型を示さなかったが、phyABあるいはphyAC2重突然変異体では、開花時期や形態に著しい変化が認められた。したがって、phyAは、phyBやphyCとの相互作用を介して開花や形態形成に重要な役割を果たしていることがわかった。phyABC3重突然変異体は、フィトクロムの機能をすべて欠いているにもかかわらず致死ではなかったが、赤色光下で育てると黄化芽生えと同じ形態や挙動を示した。したがって、フィトクロムが唯一の赤色光受容体であることが初めて明確に証明された。phyABC3重突然変異体を圃場で栽培すると半矮性で、極早稲の表現型を示した。草型は通常のイネとは大きく異なり、短い葉が、株元からではなく桿の途中から横に突き出るように出ていた。これは、通常は伸長しない下位の節間がphyABC3重突然変異体では伸びていることに起因すると分かった。したがって、フィトクロムは外界からの光情報によって節間伸長を制御し、イネの形態形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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© 2005 日本植物生理学会
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