抄録
現在知られている植物の耐病抵抗性遺伝子(R-gene)の大半は真性抵抗性遺伝子と呼ばれるもので、その機能は病原体の特定成分を特異的に認識してそのシグナルを伝達系に送り出すことと考えられる。この認識の特異性は大半の場合LRR(leucine rich repeat)ドメインによって担われるが、脊椎動物の免疫グロブリンの多様化機構に相当するものがなければ、多様で常に変異を続ける病原体に対抗することはできない。これまでR-geneの多様化は単にクラスター内での組換えによるものと考えられてきた。我々は、先にイネのいもち病抵抗性遺伝子Pi-bを単離した際に、この遺伝子がこれまで解析された多数の遺伝子と異なり、単独で存在していることを利用して抵抗性indicaと感受性japonicaの品種間でその差異を詳細に分析した結果、周辺領域において特異的に、極めて高い頻度の塩基置換が起きていることを見出した。この傾向は、ArabidopsisのLandsbergとColumbia系統間での比較においても多くの孤立したR-geneで検証されたが、同時にそれほど変動が高くないものも見出された。またArabidopsisにおける変異はbiallelicなものとの定説もあることから、さらに10系統間での比較を行った結果、実際に変動性の高いR-geneにおいては多くの新規な変異が遺伝子内で起きていることが立証された。これらの結果から、R-geneは初期の多様化過程の後、安定した機能を持つものが選抜されてゆくものと考えられる。