日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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Mnクラスター近傍水分子のS状態に依存した状態変化
山田 比呂育*三野 広幸伊藤 繁
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p. 012

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抄録
高等植物およびシアノバクテリアの光合成酸素発生は、光化学系II蛋白質複合体のMnクラスターで行われる。Mnクラスターは5種類の異なった酸化状態をとり、酸化程度の低い順にSi (i=0-4) と表記される。Mnクラスターは2分子の水分子から電子を引き抜き、S4状態で酸素分子を放出しS0状態に戻る。暗所では、S1状態が最も安定である。 反応過程においてどのように水が取り込まれ反応が進行するのかは明らかではない。
今回、S0およびS2状態のMnクラスターへの水分子の配位をENDOR測定(電子核二重共鳴)で調べた。S0 S2状態共に非常によく似た6組のENDOR信号が検出された。これらの信号はマンガンクラスターのスピン中心から6A以内のプロトンである。 また近傍2.7Aと3.3Aのプロトンは重水素置換により交換可能であった。 S0状態ではこれらのプロトンは3時間以内の交換が確認された。一方S2状態では3.3Aのプロトンは3時間以内の交換が見られたものの、2.7Aのプロトンの交換は大変遅く24時間を要した。 2.7Aのプロトンはマンガンクラスターに大変近く、マンガンに直接配位している水由来の可能性が高い。S状態に依存したプロトンの親和性の違いは酸素発生過程におけるMnクラスターの水分子の取り込みにおける過程と関係している可能性が高い。
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© 2006 日本植物生理学会
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