抄録
高等植物の葉緑体とシアノバクテリアでは、その約50%を、ガラクトースを含む糖脂質、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)が占める。このMGDGの生合成は、高等植物では、UDP-ガラクトースとジアシルグリセロールを基質とし、MGDG合成酵素による1ステップの糖転移反応によって行われる。一方、シアノバクテリアでは、UDP-ガラクトースの代わりにUDP-グルコースを基質とし、モノグルコシルジアシルグリセロール(MGlcDG)がMGlcDG合成酵素により生成され、その後さらに異性化酵素が働き、最終的にMGDGが生成するという、2ステップであることがこれまでにわかっている。16S rRNAを用いた分子系統樹においてもっとも初期に分岐したシアノバクテリアであるGloeobacter violaceus PCC 7421では、ゲノム情報が既知のシアノバクテリアの中で唯一、シアノバクテリア型MGlcDG合成酵素遺伝子と植物型MGDG合成酵素遺伝子の両方が存在しているということがわかった(Awai et al., unpublished)。そこで我々は、これらの遺伝子をクローニングし、大腸菌で蛋白質発現させ、酵素活性を調べた。その結果、両遺伝子産物ともに、UDP-グルコースを基質としたMGlcDG合成酵素活性を持つが、UDP-ガラクトースを基質としたMGDG合成酵素活性は持たないことがわかった。発表では、さらに精製した酵素を用いた生化学的解析の結果についても報告する。