抄録
モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)は高等植物の葉緑体チラコイド膜において50%以上を占める主要膜糖脂質である。我々はシロイヌナズナより3つのMGDG合成酵素遺伝子(atMGD1、atMGD2、atMGD3)を単離し、その発現や機能の解析を行っている。その内、atMGD2, 3が葉緑体外包膜に局在しているのに対し、atMGD1は内包膜に局在し、また、光合成組織で最も高い発現を示すことから、チラコイド膜の構築に主要に寄与していると考えられている。このように、atMGD1は植物の生育に重要であると考えられるが、atMGD1の変異体はこれまでノックダウン体しか報告されておらず、その役割は未だ未解明な部分が多い。そこで、我々はatMGD1のノックアウト変異体(mgd1)を単離、解析したのでその結果を報告する。
mgd1は緑化できず、光合成活性もほとんど認められなかった。また、生育も非常に遅く、約4週で矮小なまま生育が止まった。mgd1の脂質解析をしたところ、MGDGの割合が極めて低くなっていたことから、atMGD1はMGDG合成の大半を担っていることが示された。この変異体では、胚発生の段階で既に生育阻害が起こっていたことから、atMGD1は発芽後の生育のみならず、胚発生時の形態形成にも重要な役割を担っていることが示唆された。