抄録
高等植物の光合成CO2固定酵素RuBisCOは、核および葉緑体ゲノムにコードされる2種のサブユニットから構成され、翻訳後修飾や会合などの複雑な段階を経て合成される。この生合成過程において、分子シャペロンや修飾酵素といった多様な因子との相互作用が想定されるが、生合成を支える分子機構の詳細は不明である。本研究では、遺伝学的なアプローチからRuBisCO生合成に必須な因子群を同定することを目的に、RuBisCO生合成変異体の選抜法を確立した。植物にグルタミン合成酵素特異的阻害剤methionine sulfoximineを処理すると、野生株はRuBisCO活性依存的に光呼吸由来のNH3が葉に高蓄積し枯死に至るが、生合成の異常によりRuBisCO活性が低下した変異体はMSX耐性を示すと予想される。そこで11000粒のシロイヌナズナEMS種子からMSX耐性を指標に選抜を行い、8系統のRuBisCO低活性変異株を単離した。RuBisCO活性低下の原因を調べた結果、全ての株でRuBisCO量あるいは比活性の低下が認められた。これら変異体は、RuBisCO生合成に関わる様々な遺伝子の変異を有していると考えられ、生合成因子群を理解する上で大きく貢献できると期待される。現在、変異部位のマッピングを進めている。