抄録
新規なC4光合成関連因子を探索するために、C3種とC4種フラベリアを用いてディファレンシャルスクリーニングを行い、この候補として3種類の未知遺伝子の単離に成功した。このうちの一種FtCP12Lは、カルビンサイクルの主要酵素であるホスホリブロキナーゼ(PRK)およびグリセロアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼと複合体を形成し同回路を制御するとされるCP12と類似性の高いアミノ酸配列をコードしていた。そのmRNAレベルのフラベリア属内での種間差やC4種における日周変動パターンが内生のCP12とは異なることから、このFtCP12Lを介する新規な複合体形成によって、C4光合成炭素代謝が制御される可能性を示唆してきた。
今回、FtCP12Lの生化学的機能を解析するため、FtCP12Lと結合するタンパク質を同定することを試みた。ヒスチジンタグを付加した組換え体FtCP12Lタンパク質を調製し、C4種フラベリアの抽出タンパク質と混和させ複合体を再構成させた。NiキレートカラムでFtCP12Lタンパク質とともに精製されてくるタンパク質を銀染色法および既知の酵素の抗体によって調査した。現在のところ複数回の実験において約43 kDaと約 65 kDaのサイズを示すタンパク質の検出に成功し、前者についてはPRK抗体が交叉しうることを見出した。この結果は、FtCP12LがPRKとともに65 kDaタンパク質と新規な複合体を形成し、新規な代謝調節に寄与している可能性を示している。