抄録
ニトロゲナーゼは窒素固定の酵素であるが、反応の必然的副産物として水素を発生する。ラン色細菌の光合成系、ニトロゲナーゼを利用した光生物的水素生産において、ヒドロゲナーゼは水素を再吸収し、生産の妨害になると考えられた。ラン色細菌は一般にヒドロゲナーゼとして取込み型(Hup)と双方向性(Hox)の2種を持つ。Nostoc PCC 7422野生株は、hox 遺伝子を持つが、その酵素活性はきわめて低い。われわれは、PCC 7422株からΔhupL 変異株を遺伝子工学的に作製し、それらの水素生産活性を調べた。短時間(1時間程度)の活性測定では、変異株のAr気相下での見かけの水素生産活性は野生株の約3倍であり、120 μmoles H2/mg Chl/hrと高い活性を示した。ニトロゲナーゼ活性には大きな差は認められなかったから、活性上昇はH2 の再吸収が抑えられた結果である。連続光照射下での数日に亘る水素の蓄積実験では、ΔhoxH 株は、気相に水素を最高約30%に蓄積することができた。蓄積できる最高濃度は、気相、細胞濃度、培養した細胞などにより変化した。水素蓄積後、気相をArを主体とするものに置換すると水素生産が再開したが、その初速度は1回目よりも低かった。水素生産性の向上には培養条件の検討も重要であることが示された。