抄録
イタドリ、ギシギシ等のタデ科植物は、シュウ酸含有量が高いことが知られている。シュウ酸の過剰摂取は動物にとって有害であるが、その一方で、植物においてシュウ酸は重要な役割を果たしていると考えられる。その働きの1つに、シュウ酸は防御分子として重要な過酸化水素を生成する基質の1つであるため、傷害などのストレス応答との関与が推測されている。また高シュウ酸植物は、シュウ酸を根圏へ放出することで土壌中の金属イオンとキレートを形成し、金属イオンによる毒性を打ち消すことができるという報告がされている。
植物のシュウ酸合成に関して、これまでに複数の合成経路が存在することが報告されている。しかし、これらの合成経路について生化学的、分子生物学的には十分な解析がなされていない。以上のような知見から、我々は植物におけるシュウ酸蓄積メカニズムの解明を試みた。はじめにCE-MSによる解析を行い、複数種のタデ科植物を用いてシュウ酸合成系の代謝産物量を比較した。その結果、シュウ酸含有量は種間で著しく異なることが明らかになった。次に、シュウ酸合成に関与する酵素活性を測定した。タデ科植物では、低シュウ酸植物に比べていずれの酵素も活性が高く、特に乳酸脱水素酵素が高い活性を示した。本研究では、これらの結果を元に植物のシュウ酸合成経路の重要性について検討を行なうことにする。