抄録
TSF遺伝子は、花成経路統合遺伝子FTとの高い相同性から花成制御に関与する可能性が高い。
我々は、TSFはCOによる転写制御を受け光周期に依存した日周変動を示すこと、tsf変異がft変異体の遅咲き表現型を昂進することを明らかにした。さらに、TSF過剰発現体の日長によらない早咲き表現型はfd変異によって抑圧されること、TSFとFDが酵母細胞内で相互作用することから、TSFの花成促進能に FD機能が必要であることが示唆された。また、TSFおよびFTはともにSOC1の発現に対して影響を与えた。これらの結果から、TSFは主として光周期依存経路でFTと同様の分子機構で花成時期決定に機能すると考えられる。光周期のみならず、TSFの発現はFT同様にFLCの機能を介して春化経路および自律経路の制御下にあることも判明した。したがって、TSFはFTと冗長的に機能する花成経路統合遺伝子であると考えられる。上流からの制御を受けてTSF遺伝子もまた維管束篩部組織で発現していたことから、両遺伝子による花成制御経路の統合の場は維管束篩部であることが示唆された。一方で、TSFとFTの発現領域が完全に一致しないこと、TSF過剰発現体の早咲き表現型を優性のfwa変異は抑圧しないことなどから、両遺伝子には機能分化が存在している可能性がある。
Yamaguchi et al. (2005) Plant Cell Physiol.46: 1175-1189