日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナω-3デサチュラーゼ遺伝子(FAD7)の局所的傷害応答における負の制御因子の遺伝学的同定
*松田 修中尾 義和射場 厚
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p. 223

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抄録
トリエン脂肪酸は植物生体膜の主要構成要素であるとともに、病傷害応答における中枢的シグナル因子であるジャスモン酸の合成前駆体として、重要な役割を担っている。ジャスモン酸の生合成酵素をコードする遺伝子の多くは、傷害によりその発現が転写レベルにおいて顕著に上昇する。また、ジャスモン酸によるフィードフォワード制御を受けており、傷害依存的なジャスモン酸の速やかな蓄積を可能としている。FAD7遺伝子はトリエン脂肪酸合成を触媒するω-3デサチュラーゼの葉緑体型アイソザイムをコードするが、このような発現応答性を示す代表的な遺伝子である。しかし、傷害によるこの遺伝子の発現応答は、きわめて局所的な被傷害組織に限られており、一般的なトランスクリプトミクス解析技法により、その制御を司る鍵因子を同定することは困難である。われわれはFAD7プロモーターとルシフェラーゼ遺伝子の融合遺伝子をシロイヌナズナに導入することにより、傷害にともなう局所的な遺伝子発現応答を非破壊的に検出することのできる実験系を構築した。この形質転換植物を母株としたM2集団をスクリーニングすることにより、傷害応答が増大した突然変異体を単離し、その原因遺伝子が新奇な膜結合型タンパク質をコードしていることを見出した。本発表ではこの知見に加え、ジャスモン酸およびそのシグナル関連因子と、得られた突然変異体とのエピスタシス解析の結果について報告する。
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© 2006 日本植物生理学会
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