抄録
イネ培養細胞にキチンエリシターを処理することにより、抗菌性二次代謝産物であるジテルペン型ファイトアレキシンが生産される。我々の研究グループは現在までにファイトアレキシン生合成に関与するジテルペン環化酵素遺伝子を6種全て単離しており、それらはいずれもエリシター処理後6時間から8時間を極大とする一過的な発現を示す。現在までにもイネ培養細胞のエリシター処理によるマイクロアレイ解析は行われているが、エリシター処理後2時間までのエリシター初期応答遺伝子の発現解析にとどまっていた。一般に植物の防御応答の中でファイトアレキシンの生産は比較的遅い応答であることが知られている。そこで、イネにおけるファイトアレキシン生産に関与する生合成酵素遺伝子およびそれらの発現を制御する発現制御因子の探索を目的として、エリシター処理後24時間までの培養細胞におけるエリシター応答性遺伝子の発現をマイクロアレイによって解析した。各遺伝子の発現プロファイルに基づくクラスター解析を行ったところ、ファイトアレキシンの生合成に関与する可能性が考えられる遺伝子や防御応答に関与することが予想される転写制御因子の遺伝子が、ファイトアレキシン生産に関与するジテルペン環化酵素遺伝子と同一のクラスターに存在することが分かった。