抄録
近年、動植物の防御応答を誘導する共通的な機構として、微生物固有の分子パターン(Pathogen-Associated Molecular Pattern; PAMPs)認識に基づく防御応答が注目されている。細菌鞭毛成分のフラジェリンや糸状菌細胞壁を構成するキチン、βグルカン断片などは代表的なPAMPsと考えられ、その認識・応答機構に関する研究が進められている。
一方、動物の先天性免疫において細菌由来のPAMPsとしての役割が注目されているリポ多糖(LPS)に関しては、いくつかの双子葉植物において過敏感反応抑制その他の活性が報告されているものの、単子葉植物に対する作用に関しては報告が無い。我々は昨年度の年会で、種々の細菌由来のLPSがイネ培養細胞の活性酸素応答、防御関連遺伝子発現などを誘導すること、またこの防御応答はプログラム細胞死を伴うことを報告した。一方、イネ培養細胞を低濃度のLPSで前処理しておくとその後のエリシター処理に対する防御応答の感受性が高まるという大変興味深い活性(priming/potentiation活性)も見いだされた。今回の発表ではLPSの示すこれら2つの生物活性についてさらに詳細に解析した結果およびこれらの活性に必要な構造要素、作用機構に関する検討結果を報告する。