抄録
出芽酵母に存在するエリスロアスコルビン酸(eAsA)はNADP依存のアラビノース脱水素酵素(ARA)とアラビノノラクトン酸化酵素(ALO1)によって合成されると考えられてきた。我々はNAD依存のARAを新たに見いだしたので報告する。
まず酵母粗抽出液におけるARA活性のアラビノース濃度依存性から、アラビノースに対して高い親和性を持つNAD依存ARAの存在を見いだした。次に酵母ゲノム中に植物由来ガラクトース脱水素酵素のホモログとして見いだされる機能未知遺伝子: YMR041cについて、大腸菌による組換え体タンパク質を調製し、これがNAD依存ARA活性を持つことを示した。YMR041cはガラクトース脱水素酵素と類似した性質を示したが、幾つかの点で明確にこれと異なっていた。またYMR041cはALO1とのカップリングによってin vitroでeAsAを合成した。更に酵母野生株およびNADP依存ARA大サブユニット遺伝子破壊株は培地へのアラビノース添加によって細胞内eAsA量が十倍以上に増加したが、YMR041c遺伝子破壊株では殆ど増加しなかった。これらの結果から、酵母におけるeAsA合成と植物におけるアスコルビン酸合成は、酵素遺伝子の構造においても類似していることが明らかになった。