抄録
シスタチオニン γ-シンターゼ(CGS)はメチオニン生合成の鍵段階を触媒する。AtCGS1遺伝子の発現は、メチオニンの代謝産物であるS-アデノシルメチオニン(SAM)に応答してmRNA安定性の段階で負に制御される。この制御にはAtCGS1第1エキソンのコード領域が必要十分で、この領域内の植物間で高度に保存された十数アミノ酸の配列(MTO1領域)が特に重要である。試験管内翻訳系を用いた解析によって、mRNA分解に先立ちMTO1領域の直後で翻訳が停止することが明らかになり、翻訳停止領域のTrp-93の重要性が示された。Trp-93は被子植物で保存されているがコケではアラニンであり異なっている。そこで本研究では、翻訳停止におけるTrp-93の重要性を検討するために、AtCGS1第1エキソンに対応するヒメツリガネゴケPpCGSの配列を持つRNAの翻訳制御について小麦胚芽抽出液の試験管内翻訳系を用いて解析した。その結果、PpCGSの配列では、翻訳停止産物とmRNA分解中間体の蓄積は少ないものの、SAM添加に応答したAtCGS1と同様の制御が働いていた。そして、翻訳停止領域のアラニンをトリプトファンに置換すると両者の蓄積量はAtCGS1程度まで増加した。このことから、Trp-93は翻訳停止を起こりやすくするが、翻訳停止には他の要素も必要であると示唆された。