日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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葉器官形成における補償作用の分子遺伝学的解析~補償作用によって昂進される細胞伸長制御系の解析
*藤倉 潮Ferjani Ali堀口 吾朗塚谷 裕一
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p. 377

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抄録
補償作用とは、何らかの遺伝的異常により葉の細胞数が減少した時、細胞が大型化し、葉のサイズ低下を補償する現象である。このことは、葉の形成過程において、細胞増殖と細胞伸長の制御間に何らかの相互作用が存在することを示唆している。この補償作用の背景にある分子機構を明らかにするため、我々は補償作用を細胞数の減少による“誘導”過程と、細胞伸長の活性化という“応答”の過程とに分割し、それぞれの過程について発生遺伝学的解析を進めている。これまでに我々は、細胞数が特異的に減少した突然変異株oligocellulaを用いた解析から、補償作用の誘導には、閾値以下への細胞数の減少が必要であると報告してきた。しかしそれに応答する細胞伸長制御系の実態は不明である。そこで今回、応答過程に関わる遺伝子の同定を目的とした実験を行なった。まず、葉における細胞増殖は正常で細胞伸長のみが低下した突然変異株を、17系統単離した。次に、典型的な補償作用を示すangustifolia3変異株とこれらの突然変異株との二重変異株を作製し、解析した。興味深いことに、いくつかの変異については補償作用による過剰な細胞伸長が強く抑制された。従って、これら突然変異株の原因遺伝子は、補償作用にリンクした細胞伸長制御系で機能することが強く示唆される。本発表では以上のデータを基に、補償作用の誘導から応答に至る各過程の遺伝学的な解析結果を報告する。
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© 2006 日本植物生理学会
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