抄録
細胞分裂と分裂後のサイズの回復をモデル化し、細胞分裂と葉の形態形成の動的モデルの構築を目指した。モデル構築に当たっては、1)葉の分裂組織では、細胞の大きさは一定に保たれる。2)細胞分裂によって半減した細胞サイズは分裂後に元のサイズに戻る。3)細胞は減少しない。4) 細胞の隣接関係は維持される。を仮定した。モデルに基づき、葉の形態形成の際の細胞分裂の頻度、分布、方向に関する情報を入力として、葉の形態を出力するコンピュータ・シミュレーションを実装した。本モデルが実植物の形態形成をどの程度説明できるかを検証するため、水中葉と気中葉で細胞分裂パターンと葉形が異なることが知られているL. arcuataの細胞分裂の実測データに基づくシミュレーションを行い、シミュレーション結果の水中葉、気中葉の違いを観察した。シミュレータの処理は細胞を質点とみなし、葉形に従い2次元に質点を並べることで葉を表した。分裂過程は、細胞を表す点列をボロノイ分割した後、ボロノイセルを分割することでモデル化した。伸張過程は隣接細胞間にバネがあると考え、運動方程式に従ったシミュレーションを行うことでモデル化した。シミュレータの結果として、実際の形状よりも横軸方向に長い葉形が得られた。実際の形態形成における生物学的制約をさらに探索し、モデルに追加して実装していく予定である。制約の候補として細胞形状を考えている。