日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: OR-6-4
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DNA損傷・修復1
RNA polymerase II 転写伸長反応における酸化DNA損傷の影響
*倉岡 功鈴木 恭子伊藤 伸介田中 亀代次
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抄録
ヌクレオチド除去修復(NER)機構は生体内で生じたDNA損傷を除去する典型的な修復系のひとつである。この修復機構には、2つの経路が存在することが示唆されている。一つは損傷を受けたゲノムDNA全体を修復する経路(GGR)、もう一つは転写が行われている領域の転写鋳型になっているDNA上の損傷を優先的に修復する経路(TCR)である。このTCR経路には一つの中心的モデルが存在する。1)RNAポリメラーゼII(RNA polymerase II;RNAPII)が、DNA鋳型領域に生じたDNA損傷に出会う。2)RNAPIIはこの損傷を乗り越えることができずに転写合成を一時停止する。3)RNAPIIの停止が一つのシグナルとなってそれぞれの損傷にあった修復蛋白質をリクルートし損傷を修復するというものである。本研究では、ヒトRNAポリメラーゼIIが、DNA損傷に遭遇したときの挙動を生化学的解析により解明し、転写におけるDNA損傷の影響を評価することを目的とした。
 我々は転写鎖にただ一つの損傷(2-OH A, 8-oxoA, 8-oxoG, Tg)をもつ転写DNA基質を用いてRNAPIIの転写伸長反応を行なった。その結果、すべての損傷においてRNAPII転写伸長反応が損傷の部位で相補する塩基を挿入し、停止していたことがわかった。このことは、TCRのモデルにおいてそれらの酸化損傷が修復されることを示唆していると考えている。また、興味深いことに転写伸長因子であるTFIISをRNAPII伸長反応に添加した場合、2-OH A, 8-oxoA, Tg においてはRNAPII阻害効果が観察されたにもかかわらず、8-oxoGにおいてはその阻害効果が見られなかった。このことは、RNAPIIがTFIIS添加効果により8-oxoGを乗り越えたことを示している。
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© 2006 日本放射線影響学会
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