抄録
オーキシン応答因子ARF7をコードするNPH4の機能欠損突然変異体は、オーキシンに対して非感受性となり胚軸の屈性や葉の偏差成長等に異常を示す。本研究では、NPH4を中心とするオーキシン信号伝達経路を解明するためにnph4突然変異体の抑制突然変異体を単離、解析した。nph4で見られる葉の偏差成長異常の回復と、胚軸の屈地性異常の回復を指標としてスクリーニングを行った結果、snp1(suppressor of nph4 1)を単離した。snp1は劣性で、葉縁は鋸歯状を示した。マッピングの結果、snp1は1番染色体の上腕、約24.4 Mbに位置しており、この近傍にはsnp1と似た形態を示すasymmetric leaves2 (as2) (Iwakawa et al., 2002)があった。相補性検定の結果、snp1はas2を相補しなかった。AS2内の塩基配列を調べたところ、snp1では2箇所の塩基置換が起きていて、その結果、高度に保存されたC-motifで、2箇所のアミノ酸置換が起きていた(P9->S、A11->V)。as2は維管束形成が異常となるが(Semiarti et al., 2001)、snp1では維管束形成に異常は見られなかったので、snp1はas2の弱いアリルだと考えられる。以上のことから、AS2がNPH4を中心とするシグナル伝達系の下流で機能している可能性が示唆された。