抄録
アンチオーキシン耐性変異体(aar1-1)は、PCIB (p-chlorophenoxyisobutyric acid)を用い、根の生長を指標としたスクリーニングにより取得された2,4-Dに対して感受性が低下しているが、IAAに対しては野生型と同様の感受性を示す変異体である。分子遺伝学的な解析からaar1-1ゲノムでは、第4染色体の約45kbのゲノムDNA領域が消失し、約9個の遺伝子が欠失していることが明らかにされた。この変異体における2,4-Dの取り込みや代謝については、野生型と違いは認めらず、2,4-Dの情報伝達過程が異常になっていることが示唆された。aar1-1で欠失した領域に挿入がおきたT-DNA変異体やエンハンサートラップ系統を入手し、PCIB耐性を調べたところ、1系統においてPCIB耐性が認められたが、この系統(aar1-2)も約27KbのゲノムDNAが破壊されていた。そこで、相補試験、およびRNAi形質転換体の解析をおこない機能未知の62アミノ酸からなるタンパク質をコードする遺伝子(SMAP1:small acidic protein 1)がaar1変異体の形質に重要であることを突き止めた。本研究により、シロイヌナズナ根における2,4-Dの作用の一部は、IAA反応とは独立したSMAP1を介した経路で引き起こされることが示唆された。