抄録
シャジクモ類は機械刺激に対して受容器電位(ΔEm)を発生する。我々はこれまでに、シャジクモ節間細胞に長時間の機械刺激を与えると、刺激の始め(押した瞬間)と終わり(離した瞬間)の両方でΔEmを発生すること、そのΔEmは押した時よりも離した時に大きくなること、ΔEmと膜の変形の程度との間には密接な関係があることなどを明らかにした。今回は、ΔEmが膜の変形の程度に依存するという仮説をさらに検証するために、水チャネル阻害剤であるHgCl2を細胞に処理したときのΔEmついて調べた。細胞に機械刺激を与えると細胞内の水が流出するはずだが、HgCl2処理した細胞では水の流出が阻害され、結果として膜の変形が小さくなると予想される。
細胞全体に水銀処理した場合、押している間のゆっくりとした変形は有意に抑えられ、離した時のΔEm((ΔEm)E)が未処理のものに比べて明らかに小さくなった。一方、刺激を与える細胞部分にのみ水銀処理をした場合、膜の変形の程度は未処理のそれと比べてほとんど差はないものの、(ΔEm)Eは小さくなった。このことから、膜の変形に伴う局所的な水の動きがΔEmの発生に関与している可能性が考えられる。現在はエクオリンを用いて、細胞内Ca2+濃度変化(Δ[Ca2+]c)を調べている。