抄録
K+チャネルの一つであるKAT1はリン酸化を受けることが示唆されており、このリン酸化によってシロイヌナズナのK+透過性の制御機構が調節されている可能性が考えられる。本研究では、KAT1が調節を受けるリン酸化部位を同定し、リン酸化による制御の可能性を明らかにすることを目的とした。KAT1の細胞質側には、Protein Kinase Cでリン酸化される可能性のある11カ所のSer/Thrが存在する。このSer/ThrをAlaに置換した変異体を作製し、アフリカツメガエルの卵母細胞に発現させ、two-electrode voltage clamp 法によりK+電流の測定による電気生理学的解析を行った。PKCを活性化する作用をもつphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA)添加した後の電流値の変化を野生型のチャネルと変異型チャネルで比較した。野生型ではPMAを添加して約30分後に約45%の電流値の減少が見られたのに対し、変異型では電流値の減少率が野生型と比較して、増加または減少している場合が検出された。このことは、KAT1がPKCによりリン酸化されることによって、K+透過性が変化することを示唆しており、PKCと同じ気質特異性を持つリン酸化酵素によってリン酸化を受けるアミノ酸残基が存在していると考えられる。