抄録
植物細胞の細胞質分裂は細胞分裂後期に形成されるフラグモプラストにより行われ、このフラグモプラストの発達はタバコ培養細胞ではキネシン様タンパク質NACKにより活性化されるMAPKKKのNPKから始まるMAPキナーゼ経路により制御されていることが示されている。フラグモプラストの発達には微小管の構造の再構成、小胞の輸送と融合などが関わることが推定されるがMAPキナーゼ経路の標的となる分子は不明である。
シロイヌナズナにおいてもタバコと同様のMAPキナーゼ経路が細胞質分裂を制御していると考えられており、その経路を構成する遺伝子が明らかにされつつある。本研究ではシロイヌナズナのMAPキナーゼ経路を構成する遺伝子の変異株を用い、そのリン酸化タンパク質を比較した。その結果、AtNACK1とMPK4(MAPキナーゼ)の遺伝子のそれぞれの変異株でともに発現量が変化しているタンパク質が認められた。このことはAtNACK1とMPK4が同一の経路に存在することを示唆していると考えられる。またAtNACK1の変異株ではAtCDC48Aタンパク質の発現量があがっていた。AtCDC48Aタンパク質はフラグモプラストに局在することなどから、この結果はMAPキナーゼ経路がどのようにして細胞質分裂を制御しているかという疑問に新しい知見を与えるものと期待される。