抄録
UV照射によるDNA損傷 (シクロブタン型ピリミジン二量体 CPD)の光回復酵素活性は、植物のUV感受性を左右する重要な因子として働く。この酵素は、class I (下等生物型)とclass II (高等生物型)に分類されている。class I CPD光回復酵素の解析は大腸菌を用いて良くなされているが、class IIについての知見は乏しい。本研究では、イネのCPD光回復酵素の精製法を検討し、得た酵素標品の特徴を調べた。新鮮葉から、硫安分画、陰イオン交換カラム、ヘパリンカラムを用いて精製し、更にUV照射によって生成したCPDを含むDNAを結合した磁気ビーズを用い、CPD結合タンパク質を青色光照射によって遊離させ、酵素標品とした。イネCPD光回復酵素の大腸菌発現タンパク質を抗原としたポリクローナル抗体によるウエスタンブロット、TOF-MAS解析の結果、大腸菌発現タンパク質は約56kDaであったが、精製標品には約55kDaと57kDaのタンパク質が含まれていた。この標品の酵素反応の作用スペクトルは、大腸菌発現タンパク質と同様に410nm近辺にピークを示した。にもかかわらず精製標品の比活性は、粗酵素液に比べ約8,000倍、大腸菌発現タンパク質よりも数倍高かった。以上の結果、nativeなイネCPD光回復酵素は、大腸菌発現タンパク質とは異なり、光受容体としてFADの他にプテリンを含んでいる事が示唆された。