抄録
シアノバクテリアは、概日時計を持つ最も単純な生物である。時計タンパク質KaiA, KaiB, KaiCは、シアノバクテリアの時計機構に不可欠な機能を持つ。Synechococcus elongatus PCC 7942を利用した最近の解析から、KaiCのリン酸化がシアノバクテリアの概日時計の中心振動体であることが明らかになった。従って当然予想されるようにシアノバクテリアの時計機構の中枢であるkaiC 遺伝子の変異は、周期、位相、振幅などさまざまなリズム異常を引き起こす。シアノバクテリアではPCRエラーを利用してkaiC 上にランダムに点変異を導入し、それを生物発光で選別することができる。そこで、安定した24時間の概日振動を発生するメカニズム解明の手がかりとすることを目的とし、より多くのkaiC 変異体について、Kaiタンパク質間相互作用やkaiBC 発現レベル、温度や光照度の環境要因の効果等を解析した。約900クローンのkaiC 変異体を作製し比較した結果、変異体の表現型からKaiC上に周期長の決定に関与する領域があることが示唆された。また光照度、温度の変化による周期の変動や、暗パルスによる位相変位と変異部位の相関についても調べた。今回は時計の生理学的性質に影響を及ぼす多数の変異体の解析から示唆される点を報告するとともに、こうした変異がKaiCリン酸化サイクルに及ぼす影響を報告する。