抄録
シロイヌナズナのオーキシン非感受性優性突然変異体massugu2(msg2)の原因遺伝子は、29個あるAux/IAA遺伝子のIAA19をコードしている。遺伝子族間の特異性を明らかにするために、分子系統樹でMSG2/IAA19とは異なるクレードに属し、かつ優性変異を持つaxr2/iaa7やslr/iaa14とMSG2プロモーター(pMSG2)の融合遺伝子をシロイヌナズナに導入し観察した。その結果、MSG2プロモーター特異的な制御とそれぞれのタンパク質特異的な形態変化の両方があることがわかった(武藤ら、2005年度年会)。興味あることに子葉を片方、又は両方欠失している個体がpMSG2:axr2とpMSG2:slrで3割出現した。これはmsg2-1やaxr2-1やslr-1優性突然変異体では見られない、新規の形態変化である。pMSG2:GUSが心臓型胚の子葉原基で発現することから、axr2やslrの異所発現が子葉形成に影響を及ぼしたと考えられる。このことは優性突然変異を持つmsg2-1タンパク質が子葉原基で発現しても、子葉形成に異常を起こさないメカニズムがあると考えられ、新しいAux/IAAタンパク質の役割が示唆される。現在、このメカニズムを明らかにするため、msg2-1種子にさらに突然変異誘導をかけたM2種子で子葉を欠損する変異体をスクリーニング中である。