抄録
維管束組織は植物体全体に連続した形で分布する複合的な通道組織である。双子葉植物の葉の展開は二次元的に広がり、維管束も二次元的なパターンを形成するのに対し、単子葉植物では葉の伸長に携わる細胞分裂領域が基部に集約されるためその展開は一次元的で、維管束も直線的なパターンを形成する。このことから単子葉植物では、葉の基部領域を連続観察することで維管束分化・形成過程を時空間的な連続性を維持した状態で追跡できる。そこで本研究では単子葉植物のモデル植物であるイネを用いて維管束形成機構の解析を進めた。
これまで、あまり解析されてこなかった野生型のイネの葉における維管束組織の分化過程とパターン形成に関する観察から、葉身・葉鞘における維管束パターン及び維管束内部構造の詳細な形成過程を観察し、分化段階に応じてステージ分けを行った。この野生型の観察から得られた知見を基に、維管束形成に異常を示す突然変異体の探索を行い、葉身・葉鞘における維管束パターンに異常を示す突然変異体として11系統を、維管束内部構造に異常を示す突然変異体として1系統を単離した。維管束形成過程における野生型と突然変異体の表現型の比較を通して、イネの葉における維管束形成機構について考察する。