抄録
我々は現在までにイネのアクチベーションタギングライン約13,000を作製している。これらのラインでは 4コピーの35Sエンハンサー及び35Sコアプロモーターがアグロバクテリウムを用いたT-DNAタギング法により導入されている.本ラインから選抜された短粒変異体(Short grain 1, Sg1)では草丈も半わい性を示し、次世代で種子及び草丈の表現形とエンハンサー挿入がリンクしていた。ホモ個体をジベレリン処理すると草丈は部分的に回復した。既知のイネ完全長cDNAに対応する遺伝子領域が、エンハンサー挿入部位の1.4 kb下流に存在していたため、この遺伝子の葉身での発現をReal-time PCRで調べたところ、WTではほとんど発現していなかったのに対し、短粒半わい性形質を示す個体では強い発現が認められた。更にWTにおける発現レベルの組織特異性を調べたところ、葉身<葉鞘、穂<根、幼穂(1cm以上)<<幼穂(1cm以下)の順に高くなっており、粒(穎)の原基の形成される時期の幼穂で最も強く発現していた。この完全長cDNAがコードすると予想されるタンパク質は既知のタンパク質とは相同性を示さず、新規タンパク質であった。以上よりこの遺伝子の過剰発現の結果、短粒半わい性形質がもたらされたことが強く示唆されたので、当該cDNAをイネの過剰発現ベクターに連結し現在再導入実験を行っている。