抄録
植物特異的転写因子であるSBPファミリーは、キンギョソウSQUA のプロモーターに結合する因子より同定され、シロイヌナズナでは16遺伝子がこのファミリーに属する。in vitroの実験から、そのうちいくつかがSQUAのシロイヌナズナオルソログのAP1プロモーターに結合することが知られている。SQUAやAP1は花芽分裂組織への分化の決定や花器官形成に働くことから、SBP遺伝子群が花成や花器官形成を制御していることが考えられる。これまで、SBP遺伝子の機能欠失変異体の報告はほとんどなく、ファミリー内における高い相同性からも、SBP遺伝子間の機能重複が示唆される。そこで我々は、シロイヌナズナのSBPファミリーの、花成、花器官形成への関与を推察するため、内在性の転写因子や重複した転写因子に対してドミナントに働くキメラリプレッサーを植物体で過剰発現させるCRES-T法を用いた解析を行った。シロイヌナズナのSBPファミリーのうち相同性の高いSPL2、SPL10、SPL11は、組織別発現解析の結果、花における発現が高いことが示された。これらの遺伝子に転写抑制化ドメインを付加し、植物体で過剰発現させると、頂芽優勢の欠失や、花弁や花柄が短くなるという表現型を示した。SPL2のT-DNA挿入変異体は表現型が野生型と差異がないことから、SPL2がSPL10、SPL11と重複した機能を持つことが示唆された。これらSPLがどのような遺伝子を標的とし、花成、花器官形成を制御しているのかを考察する。