日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナの根端成長に対する温度の影響の細胞動力学的解析
*岩元 明敏杉山 宗隆
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 638

詳細
抄録
植物の先端成長は遺伝・環境要因によって大きく変化し、その結果は細胞増殖と体積増大(体積成長)の違いとして現れる。この2つの側面はそれぞれ様々な要素から成り立っている上に、相互の影響下にもある。先端成長に与える遺伝・環境要因の効果の本質を捉えるためには、この複合的な関係を解体し定量的に分析する必要がある。我々は細胞増殖と成長とを関連づける数理モデルを考案し、これと従来の細胞動力学的方法とを組み合わせた解析がこの問題に対して有効であることを示してきた。今回は環境要因の一つとして生育温度を取り上げ、28℃、22℃、16℃の3条件で育成したシロイヌナズナの根端成長を、数理モデルを組み込んだ細胞動力学的方法によって比較解析した。22℃と28℃では成長の空間パターン、比コスト係数ともに顕著な違いを示さなかった(「比コスト係数」は数理モデル解析によって算出されるパラメータであり、細胞増殖、体積成長、器官維持の各側面の相対的効率を反映する)。一方、16℃では22℃、28℃と比べて細胞増殖率と体積増大速度が著しく低下しており、細胞増殖域と成長域両方の狭小化が認められた。また、細胞増殖と体積成長の比コスト係数が大きく変化していることも分かった。これらの結果は、低温条件下では体積成長および細胞増殖の効率の低下により根端成長が抑制されることを示唆している。
著者関連情報
© 2006 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top