抄録
微小管構成サブユニットであるα、β-チューブリンのCva(C-terminal variable acidic amino acid region)は、他の因子と直接接する機会の多い微小管最表層に位置し、酸性アミノ酸に富みアイソタイプにより異なる配列が、更にリン酸化やグルタミル化などの修飾を受けることが報告されている。微小管は細胞周期の進行に伴ってその分布と機能がダイナミックに変化し、分裂期前後にはPPB, spindle, phragmoplast, cortical MTと大きな変化が見られることからこの時期にチューブリンの分子種にも変化が見られる可能性がある。二次元電気泳動で分離した、分裂期前後のタバコβ-チューブリン・アイソフォームスポットをMALDI-TOF MSで解析したところ、各スポットは必ずしも単一のアイソフォームから成ってはおらず、リン酸化やグルタミル化等の翻訳後修飾を受けた複数のアイソフォームの混ざりから成る複雑な構成である事が示唆された。MALDI-TOF MSは、混合物やピコモル以下の試料でも分析出来、PSDやCPY法により配列情報を得ることも可能である点で有用であるがCva由来のペプチドフラグメントのような多数の酸性アミノ酸やリン酸を含むものについては測定が比較的難しい。今回試料調製や測定法を種々検討し、それらの一部について解析が可能になったので、その結果について報告する。