日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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遠心過重力環境下におけるアズキ上胚軸のキシログルカン代謝の変化
*曽我 康一新井 邦典若林 和幸神阪 盛一郎保尊 隆享
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p. 676

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抄録
双子葉植物は生育環境の重力の大きさに応じて抗重力多糖であるキシログルカンの分子量を調節することにより細胞壁強度を変化させ、重力の力に抵抗し、対抗できる体を構築している。細胞壁多糖の分子量は合成と分解のバランスで調節されると考えられる。本研究では、キシログルカンの合成と分解の両過程に対する遠心過重力の影響をアズキ上胚軸を用いて解析した。種子および根を切除した上胚軸カッティングの切り口から[6-3H]-フコースを与え、成長部域のキシログルカンの合成量と分子量を調べた。キシログルカンの合成量は300 g環境下でも1 g環境と同程度に時間とともに増加した。次に、3H標識されたキシログルカンの分子量分布を調べたところ、重力環境に関わらず現存するキシログルカン(平均分子量: 1.1 MDa)より高分子側(1.6 MDa)に溶出され、過重力は新たに合成されたキシログルカンの分子量に影響しなかった。1 g環境下では、標識されたキシログルカンの分子量分布は時間ととともに低分子側にシフトしたが、過重力環境では低分子化が抑制された。以上の結果から、上胚軸で新たに合成されるキシログルカンは高分子の状態で細胞壁に取り込まれた後、細胞壁中で分解され低分子化することが示された。また、過重力はキシログルカンの合成過程には影響せず、分解過程を抑制することによりキシログルカンの高分子化を引き起こすと考えられる。
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© 2006 日本植物生理学会
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