日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナのスフィンゴシン-1-リン酸ホスファターゼ遺伝子の機能解析
*中川 範子岩本 照子今井 博之
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p. 687

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抄録
スフィンゴシン 1-リン酸(S1P)は、気孔閉鎖のアブシジン酸シグナル伝達経路に関与する脂質シグナル伝達物質である。S1Pの細胞内レベルは、S1Pの合成酵素スフィンゴシンキナーゼと、S1Pの分解酵素スフィンゴシン-1-リン酸リアーゼ(SPL)またはスフィンゴシン-1-リン酸ホスファターゼ(SPP)の相対活性により決定されると考えられる。我々は、気孔の閉鎖過程におけるABA情報伝達ネットワークの一端がS1Pレベルの動的平衡の上に維持されているという可能性を、S1P代謝に関与する酵素の発現制御の観点から明らかにするために、スフィンゴシンキナーゼ遺伝子AtLCBK1を単離し、最近この遺伝子の発現について報告した(Plant Cell Physiol. 46: 375-380, 2005)。本研究では、酵母SPPのオーソログと思われるシロイヌナズナの遺伝子AtSPP1が機能的にSPPをコードすることを、酵母SPL欠損株を用いた相補性試験、およびSPP活性の測定によって明らかにした。また、AtSPP1に関するシロイヌナズナ遺伝子破壊株(SALK T-DNAライン)について、葉の重量を計時的に測定し、水分蒸散率を調べたところ、遺伝子破壊株は野生株に比べて蒸散率が低下していた。これらのことから、AtSPP1遺伝子の発現制御が気孔の閉鎖機構に関与していることが強く示唆された。
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© 2006 日本植物生理学会
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