抄録
植物は風雨や接触、重力などのさまざまな機械刺激に応答する。また電気生理学的モデル植物であるシャジクモ類においては、刺激受容の際に Cl-チャネルの活性化による受容器電位が発生するということが知られている。我々はこれまでの研究から、受容器電位発生の最初の過程は、機械刺激感受性の Ca2+ チャンネルの活性化であることを明らかにした。しかし、機械刺激を受容したチャネルの活性化が膜の変形によって起こるのか、もしくは伸展によって起こるのかについてはわかっていなかった。そこで今回これらのことを明らかにすべく、エクオリンを顕微注射したシャジクモ類節間細胞に原形質分離と原形質復帰とを行い、これらの処理に伴う原形質膜の伸展と細胞内 Ca2+ 濃度変化の関係を調べた。その結果、原形質分離と原形質復帰の両方の処理で細胞内 Ca2+ 濃度が上昇するが、それぞれの細胞内 Ca2+ 濃度変化のパターンが異なることを確認した。これらのことは、機械刺激感受性チャンネルの活性化を引き起こすものは、膜の変形であるよりはむしろ膜の伸展 (stretch) である可能性を示唆している。